高知県内の建設現場では、無事の竣工を祝う式典や記念撮影が、施主との関係性を深める大切な節目になります。
完成した橋梁や建屋をドローンで空撮し、施主に提供したり、自社の実績として掲載したりすることも、いまや珍しいことではありません。
一方で、この「問題になりにくそうな場面」に、判断を誤りやすい法的な死角が存在します。
現場では慣例として行われていても、制度上は別の扱いになる――そのズレが、経営リスクに直結するケースがあります。
「いつもの包括申請」が通用しない瞬間
多くの建設会社が取得している年間の包括申請は、日常的な点検・測量・進捗確認といった業務を前提に設計されています。
そのため、申請内容によっては「催し物上空の飛行」は想定外になっていることが少なくありません。
航空法上の「催し物」は、必ずしも大規模イベントに限られません。
- 竣工式として施主や来賓が集まっている
- 式の進行時間に合わせて撮影を行う
- 集合写真のため、特定の場所に人が集まる
こうした条件が重なると、航空局の審査要領では「催し物」と判断される可能性が高まります。
点検と同じ感覚で飛行させた結果、制度上は「許可を受けていない特定飛行」になる、という構造です。
高知の地形が、判断の難しさを増幅させる
高知県内の現場では、地形や気象条件がこの判断をさらに難しくします。
四万十川流域の狭窄地や室戸方面の海岸沿いでは、谷地形や海陸温度差の影響により、局地的な突風や不規則な気流が発生しやすい環境条件が存在します。
「催し物」として個別申請を行う場合、申請時には通常よりも厳格な前提条件が求められます。
- 立入禁止区画をどこまで確保するか
- 補助者をどの位置に、何名配置するか
- 風速や中止判断の基準をどう設定するか
これらを十分に整理しないまま、包括申請の範囲と理解して飛行させた場合、
万一の事故は「想定外」ではなく、「必要な判断を省いた結果」と評価される余地が生じます。
問題は、賠償額だけでは終わらない
無許可飛行や安全措置不十分が指摘された場合、影響は一時的な損害にとどまりません。
- 指名停止や行政処分
法令違反は、公共工事における入札資格に直接影響します。 - 保険が適用されない可能性
多くのドローン保険は、法令遵守を前提としています。 - 説明責任の問題
「なぜその判断をしたのか」を、施主や関係者に説明できるかが問われます。
これらはすべて、現場判断ではなく経営判断の領域に属するリスクです。
自社対応か、外部の知見を使うか――分岐点の整理
すべてのドローン飛行を外部に委ねる必要はありません。
測量や定常業務としての飛行を、自社で合理的に運用しているケースも多くあります。
一方で、次のような条件が重なる場合は、一度立ち止まって整理する余地があります。
- 特定の時間に、特定の場所へ人が集まる
- 施主や来賓など、説明責任が重くなる関係者が参加する
- 撮影物が広報・記録として外部に残る
- DIPS申請時、「催し物」に該当するかどうかで迷いが生じる
重要なのは「依頼するかどうか」ではなく、
自社の判断が制度上どこまで耐えられるのかを把握しているかという点です。
ドローンを“攻め”に使うための前提
ドローンは、建設業の生産性や表現力を高める有効な手段です。
だからこそ、「現場では問題なさそう」という感覚と、「制度上も説明できる」という状態を一致させておく必要があります。
現場判断を否定するのではなく、
その判断がどの条件で揺らぐのかを知っておくこと。
それ自体が、事業を継続させるための備えになります。

